左官の物語

2017年8月4日 | izumi | イエローデータデザイン日記, 奥日田温泉 うめひびき

◼︎原田さんの材料は日本をめぐる

私の左官好きの理由は何かというと左官ほど自然素材を使う仕事はないなと思うからです。今日は、日田の新館の梅干し壁と言っている赤い壁のベンガラの色を決めることと段取りの打ち合わせを日田の左官の名士、原田さんとします。日田には左官仕事がたくさん残されていますが、どのまちにも左官の由来があるようです。一通り打ち合わせが終わって、原田さんの左官の講話が始まります。私の大好物な話です。

もともと、原田さんの家は土間をつくったりする普通?の左官をしていたそうですが、ある時、昔ながらの左官の魅力に取り憑かれたそうです。そこから日田どころではない九州を代表する左官になられるわけですが、その左官の魅力とは、その素材のこだわりにあると思います。そしてその自然の素材同士がある工程の中で巻き起こす科学の妙だということです。大きくは土とつなぎの素材の話なのですが、お話を聞いているとまるで健康な料理の話みたいです。シックハウスに悩まされる人たちにとって土壁は健康建材なので納得です。

まず、函館の天然の銀杏草(関東ではツノマタと言われているもの)のお話。銀杏草は漆喰の糊の役割をするそうです。漆喰の主な材料は「消石灰」と「すさ」とこの糊、つまり「銀杏草」。原田氏曰く、とっておき銀杏草は函館のものだそうで、わずが4月の15日〜30日の収穫時期にしか採れなくて、それも潮目を見ながら採るそうです。そして「すさ」。すさは大麻草の茎を乾燥させてつくるものですが、今は何やら大麻草って言うと悪いようなものですが、元々は大麻は神事に使われる神聖な植物です。しめ縄も相撲のまわしも大麻から採れる麻なのです。最近は、ジュートだったりで代用したりしているでそうです。ふ〜ん。土壁は本当に自然の産物からできているんだと改めて思います。しかし、だんだんと採取する人もいなくなったり、その産物もイエローデータになりかけているようです。
いつも伝統工芸というものは、自然環境を図るものだと思うのです。伝統工芸は、単に技術の伝承でなくその背景を現代につなぐためにあると思います。
その背景とは人が自然と共生することを美を介在しながら伝えているように思います。驕るなよ、人間。守ろう、自然。こんなことを伝統工芸には感じるのです。

そして、そこには不思議なことに自然が教える科学があると気がつくのも、面白いことです。工芸の存在理由に、古代から実証されてきた科学の力があるということ、それが工芸の魅力であり、ますます工芸をさらに愛おしくさせるのです。

再び梅干し壁が楽しみになりました。

岡部泉