うめひびきの山

2017年10月17日 | izumi | イエローデータデザイン日記, 奥日田温泉 うめひびき

◼︎いま私がやれることは願うだけ

山登りにも隊列順があるもの。工事も登山みたいなもので、歩き始めの道は穏やかでもまだ足が慣れていないので、それなりにきついものです。企画や基本設計の時期です。途中の五合目くらいは、道にも迷うし行ったり来たりの無駄もします。でもああでもないこうでもないと皆で試行錯誤後する楽しみがあります。後半の7合目あたりはさらに頂上を目指すもその頂上は見えているのに到達できないもどかしさがあります。いまは9合目。工事関係の人たちの最後の踏ん張り時です。先鋒隊の私の踏ん張りどきは今年の8月でした。大きな指示が出せる最後の時期でした。毎日が苦しく頭の中がグルグルとしていました。

いまは、ただ、工事が安全に終わることを祈るだけです。11月1日オープン、頂上を目指して頑張ってください。

岡部泉

梅の赤壁オープン

2017年10月16日 | izumi | イエローデータデザイン日記, 奥日田温泉 うめひびき

◼︎ついにその姿が現れる

昨日まで足場の間から見ていた梅の赤壁がついに現れました。朝から足場を手際よく外していきます。少しずつその姿が、、
そしてついにその全貌が現れました。
おおおーーーっ。。。きたぁ〜。。

これまで一緒にこの赤壁をつくってきてくれた現場の方々一同、赤壁の勇姿に顔がほころびます。その姿は期待以上の堂々たるものでした。へんてこりんなデザインだと皆さん、疑問に思ったことでしょう。どうなんのと不安に思ったことでしょう。しかし、そのへんてこりんなデザインが、左官の名匠、原田氏の手によって風格が加わり、新しくも普遍性をもった意匠に変わりました。

ありがとうございます。原田さんにお願いしてくれて。
この赤壁は原田さんにやっていただきたいと、現場が始まる前から願っていましたが予算の都合もあり、なかなか言い出せないでいました。そこにとある偶然が重なり、原田さんがやってきたのです。これぞ、願えば叶う!でしょうか。しかし、それを許してくれた所長や皆さんに感謝です。

ベンガラの松葉びきの赤壁はしなやかな天鵞絨のような風合いに思えます。小端瓦は梅と雲と水をイメージしながらデザインしましたが、その全体はまるで天に向かう龍のようにも鳳凰のようにも見えます。

夕方、この赤壁に灯りが灯りました。するとその龍や鳳凰がさらに力強く浮き出して見えます。壁から動き出しそうです。ぼんやりこの壁を眺めているとこれまでのことが浮かんできますが、やはりこういう大変な仕事は完成した時の満足度が違います。

「面白かったね。またこんな仕事してみたいね。」と隣のN氏に言うと「ううう、、僕はしばらくはいいです。。」と言います。そうだね、大変だったもんね。すこし休もうね。

岡部泉

日田の町

2017年10月15日 | izumi | イエローデータデザイン日記, 奥日田温泉 うめひびき

◼︎手仕事のあるまち

今日は現場は、日曜日なので職人の皆さんも少ない。そこでここらの地域調査です。うめひびきのS氏に案内してもらいます。まずは以前から行きたいと思っていた小鹿田焼の窯元を訪ねます。途中の山道には今年の豪雨がもたらした傷跡がまだ残っていました。あらためて災害の大きさを確認することになりました。

小鹿田焼はまさに民藝の器です。私は昔から柳宗悦の民藝運動に賛同していて「用の美」という言葉が好きでした。小鹿焼は全てが手作り。土も釉薬もここで作られます。緑釉に用いられる酸化銅も銅線を焼いて銅を取り出して釉薬にまぜるとのことでした。もちろん器つくりも電気もいらない蹴ろくろです。訪ねた窯元にも二つのろくろがありました。お父さんと息子さんのろくろです。大概はろくろは二つと決まっているようです。これも作りすぎない、産業品にならない、大量生産にしない小鹿焼のポリシーなのでしょうか。土も釉薬も全てが自然のものです。丁寧に自然の産物を使って暮らせるだけのものをつくるということなのかもしれません。なにせ、今は有田だって陶土がなくなってしまっているのですから。一度焼いた土はまた土に戻ることがありません。陶器つくりは地球を削ってできているといつも思っていました。
民藝の真髄は、手の限界が自然や物事の調和を整えるということなのではないでしょうか。人間が奢らないように手という枠をつくるのが民藝ということなのです。

この窯元さんでは、うめひびきの卵をとく緑釉の受け皿付き茶碗を作ってもらいました。本当はこんな大きさの器はつくらないんだけどとお父さんは言います。いつも作っている形とサイズではないとのことでした。でも、つくってみたら案外他のお客さんにも喜んでもらえたそうです。お客さんがまたお客さんをつくるんだねと言ってくれてよかったです。

私も小鹿焼の器を購入して、この山深い静かな窯元を後にしました。次は豆田町で開催されているバーナードリーチと小鹿焼の展示会を見に行きます。
バーナードリーチの作品は、駒場の民藝館でよく見たものです。良く聞いたらその民藝館の作品が陳列されているとのことです。あら、懐かしい。
民藝は世界にももちろん通じているし、民藝の心は共通です。詠み人知らずの民藝こそ愛すべきものであると思います。

昔の想いが左官の町、豆田町でよみがえってきました。
天領の町、豆田ではかつて物、人、金が盛んに流通していただろうと容易に想像できるほどしっくい壁でできた蔵が立ち並びます。左官好きにはたまらない町なのです。その多くの蔵には、その家の繁栄を願うべく鏝絵も付されています。長寿を祈る鶴が舞い、子孫繁栄を願う兎が勇ましく波に乗り、出世を望むために鷹が飛ぶ。松、梅、竹、恵比寿、大黒などそれぞれのモチーフに願いを込めた鏝絵は当時、左官の名手がその家の主人の想いをこめて腕を振るったことでしょう。まさに詠み人知らずですが、手の仕事がまちに根付いていたことがわかります。そういう手の仕事があるまちは、時代を経てもこれを残したいという愛着が生まれてきます。

我がうめひびきにも、この伝統的な手の仕事を残すことができました。大きな赤いベンガラの壁面には、繁栄を祈るため梅の花が波にのり空に舞うがごとくです。どうぞ、いつまでもこの館が愛され繁栄しますように。。。

岡部泉

うめひびきの赤壁

2017年10月14日 | izumi | イエローデータデザイン日記, 奥日田温泉 うめひびき

◼︎ついに始まった、、

うめひびきの赤壁の上塗りが今週始まりました。いよいよ、ここに赤い色が登場。待ちに待った赤壁。
日田はさすがに蔵の街で、いい左官の仕事が残っています。その蔵のディテールとダイナミックな仕事に触発されてこのうめひびき新館の赤壁があります。日田の左官の名人、原田氏の渾身の思いをここに込めてほしいと思っています。

現場からその経過が送られてきます。あぁ、、いいなぁ。。わくわくしてきます。ということで、北海道からすぐ九州に飛びます。この仕事を見ずしてこの現場の意味がありません。朝飛行機をキャンセル待ちして飛び乗りました。わくわく、どぎどき。。

現場のN氏に日田まで迎えに来てもらって現場へ直行。やってるやってる。原田さんもきてくれている。赤壁の松葉びき(原田さんの庭の松葉を束ねて生渇きの赤(ベンガラ)しっくいに松葉で優しく表情をつける技法)が赤の色に優しい影をつけていてさらに赤が深くなっています。
やはり赤は人の心を惹きつける色です。

その赤を引き立てるように柱は黒ノロになっています。そして赤壁には小端瓦が梅の形や水や雲の形になって描かれています。その隙間を塗るのは大変だったでしょう。特別なコテも作ってもらいました。その数40本。小さな隙間を埋めるほそーーいコテもあります。爪楊枝くらいの隙間なのです。

それを全国から集まってくれた18人の左官職人さんたちが一気に仕上げてくれました。

今日は、蔵の入り口となる玄関のしっくいの仕上げです。これがまた美しい。コテの技が光る素晴らしい仕事なのです。夕方暗くなるまでその仕事を見させていただきました。

岡部泉

日田の旅館

2017年9月2日 | izumi | イエローデータデザイン日記, 奥日田温泉 うめひびき

◼︎宿題もだんだんと減って。

日田の旅館はまさに佳境。昨日までに沢山の意匠や指示書を出しました。確実に私の宿題は終わりに近づいています。8月の末までに、現場の皆さんが困らないように未決の素材や意匠がないようにしたいと思っていました。私に課せられた宿題は残すところあと数項目となっているはずです。

ここ1ヶ月、現場に行けていないので、次に行く時が楽しみです。
梅干し壁に瓦が貼られていることでしょう。この作業も見たかったな、、

同時並行で、梅酒工房や売店、道の駅があります。考えてみたらかなりの仕事量です。
我ながら、よくぞここまでやれたものだと思います。関わっているのが、不肖の弟子、T君と二人だけなんですから。これも現場の皆さんの協力あってのことです。現場がとてもいい関係で進められたことが一番の助けでした。長い現場はやはり楽しく面白くが原則です。まだ終わってはいませんが、ようやく7合目。ここまでありがとうございましたと申し上げたいです。

岡部泉

弟子、日田の旅

2017年8月24日 | izumi | イエローデータデザイン日記, 奥日田温泉 うめひびき

◼︎今日は納品日

今日は、スタッフのT君に一人で納品作業に言ってもらいます。弟子の一人旅です。日田の旅館は9月に部分開業するのです。その第一回目の納品です。うちは企画もしてデザインもして設計もして備品のコーディネートもして納品もします。まさに旅館の仕事を丸受けって感じなのです。いつもは私も張り切っていくところなのですが、この暑さが不安。。。そこで私は居残りで送迎バスのデザインをしたり、T君の報告を受けて指示を出します。
(北の案件はY君が一人で打ち合わせ、、みんながんばれ)

朝早くからT君から細かな連絡がラインで届きます。日田の案件なのでやはり日田のものつくりを取り入れることにしています。日田の家具屋さんにお願いしたキッズエリアの杉の家具が出来てきたそうです。なんだかその家具屋さん、うれしくて楽しくなっちゃって、他の家具もグリーン、黄色、オレンジと色分けして塗っちゃったとのこと。あれま、、でも梅酒の熟成カラーではありませんか。。仕方ないな。これもなんとか受け入れるしかありません。キッズエリアが広がっちゃうな。

梅干し壁と呼んでいる日田の左官の原田さんがやってくれる赤い漆喰壁も始まったそうです。早くいろんなことを解決させて行かなくちゃ。

岡部泉

養生

2017年8月12日 | izumi | イエローデータデザイン日記, 奥日田温泉 うめひびき

◼︎ジャクソン並みの養生

日田の現場に高級風呂ジャクソンがやってきました。随時N氏が画像を送ってきてくれます。今が一番現場がどんどんとできた上がっていくときなので、現場に行きたいのは山々ですが今は少し辛抱して体調を整えます。

ジャクソンはとても高級なものなので、周りのタイルやいろんなものが完成しないと養生を剥がせないとのことでした。ということでグレーのジャクソンのほんの片鱗しか画像には写っていません。グレーのジャクソンはおそらく日本でも珍しいと思います。大概は無難な白を選ぶところ。
グレーのジャクソンはひびき渓谷の懐にて大切に養生されています。

私も今は養生にこころ掛けます。まずは食事からです。ここ半年くらい食生活が乱れていました。まさに人の体の基本は食養生からです。朝からひじきを炊いたり、魚を煮たり、昆布水を作ったりと以前の食生活を取り戻しつつあります。仕事は50パーセントダウンにして夏休みを過ごします。
ここ一週間はジャクソン並みに養生です。

岡部泉

日田の新館

2017年8月5日 | izumi | イエローデータデザイン日記, 奥日田温泉 うめひびき

◼︎屋根ができたぁ、、庭がみえてきたぁ

2月から始まった工事ですが、1階2階3階とコンクリートが打ち上がり、ようやく最後、屋根。毎週のように通う現場ですが、仮囲いの向こうに屋根の形が、、。見えてきたぁ。高さを制限したつもりでしたが、それなりに勾配もあり大屋根としての迫力があります。こうして屋根ができて全体のプロポーションが見えてくるとようやく建物としての存在感を感じることができます。となると、この館の車からのアプローチの視点が気になります。こんもりと茂った濃い緑色の大きなクヌギが2本、この館の半分を覆ってみえます。そこで造園やさんのK氏にこのクヌギを大胆に剪定してもらうことにしました。こんなにおおきくなったクヌギに申し訳ないなと思っていましたが、K氏は大丈夫、クヌギはすぐにおおきくなるからねと。そうか、原木椎茸の材料にしてもらえばいいかと思いざっくり切ってもらうことにしました。
(このクヌギを使って原木椎茸栽培を広い広い敷地の中でやればいいんじゃないかと心の中で思うのですが、そんなことをしたいなんて思う人はいないかぁと思ったり。。本来はこんなに土地があるので食材を育てたいって思うくらいじゃないと山の料理屋の価値って生まれないと思うけど。。そこらへんの菌床椎茸を出しても仕方ないんだけどな。。)

さて、話を戻すと造園という仕事はとても大事です。造園は建物と自然との調和を図るいわば潤滑油のようなものです。ここの壮大な景色と人工的な建物との調和を図るのはかなりむずかしさがあります。ここは里山的ではなく、原始の隆起してきた古代を感じるような風景なのです。作りこみすぎるとかえって自然と離れすぎて分離したものになります。しかし何もしないと庭としては成立せず、人が過ごしづらいのです。壮大な景色と人の手が入った庭を交互に眺めた時に、おかしくならないようなバランスが必要です。程よい自然との結界をつくることがこの現場には求められています。

時にこの施設面積は相当に大きいのですが、手入れもされずに放置されつづけてきた植木たちはその結界の役割を放置されたかのようでした。造園のK氏にこの木があるべき役割に戻す作業をしていただきます。上手に結界と結界を外したところを作ってもらう、これが今回の造園のテーマです。
随分と大胆に野放図な木が整理されていきます。これからの調整が楽しみな造園の段階に入っていきます。

それにしてもこの暑い暑い日々が続く中、働いてくれている現場の人たちに感謝をすると同時に体に気をつけていただきたいと思うのでした。

岡部泉

左官の物語

2017年8月4日 | izumi | イエローデータデザイン日記, 奥日田温泉 うめひびき

◼︎原田さんの材料は日本をめぐる

私の左官好きの理由は何かというと左官ほど自然素材を使う仕事はないなと思うからです。今日は、日田の新館の梅干し壁と言っている赤い壁のベンガラの色を決めることと段取りの打ち合わせを日田の左官の名士、原田さんとします。日田には左官仕事がたくさん残されていますが、どのまちにも左官の由来があるようです。一通り打ち合わせが終わって、原田さんの左官の講話が始まります。私の大好物な話です。

もともと、原田さんの家は土間をつくったりする普通?の左官をしていたそうですが、ある時、昔ながらの左官の魅力に取り憑かれたそうです。そこから日田どころではない九州を代表する左官になられるわけですが、その左官の魅力とは、その素材のこだわりにあると思います。そしてその自然の素材同士がある工程の中で巻き起こす科学の妙だということです。大きくは土とつなぎの素材の話なのですが、お話を聞いているとまるで健康な料理の話みたいです。シックハウスに悩まされる人たちにとって土壁は健康建材なので納得です。

まず、函館の天然の銀杏草(関東ではツノマタと言われているもの)のお話。銀杏草は漆喰の糊の役割をするそうです。漆喰の主な材料は「消石灰」と「すさ」とこの糊、つまり「銀杏草」。原田氏曰く、とっておき銀杏草は函館のものだそうで、わずが4月の15日〜30日の収穫時期にしか採れなくて、それも潮目を見ながら採るそうです。そして「すさ」。すさは大麻草の茎を乾燥させてつくるものですが、今は何やら大麻草って言うと悪いようなものですが、元々は大麻は神事に使われる神聖な植物です。しめ縄も相撲のまわしも大麻から採れる麻なのです。最近は、ジュートだったりで代用したりしているでそうです。ふ〜ん。土壁は本当に自然の産物からできているんだと改めて思います。しかし、だんだんと採取する人もいなくなったり、その産物もイエローデータになりかけているようです。
いつも伝統工芸というものは、自然環境を図るものだと思うのです。伝統工芸は、単に技術の伝承でなくその背景を現代につなぐためにあると思います。
その背景とは人が自然と共生することを美を介在しながら伝えているように思います。驕るなよ、人間。守ろう、自然。こんなことを伝統工芸には感じるのです。

そして、そこには不思議なことに自然が教える科学があると気がつくのも、面白いことです。工芸の存在理由に、古代から実証されてきた科学の力があるということ、それが工芸の魅力であり、ますます工芸をさらに愛おしくさせるのです。

再び梅干し壁が楽しみになりました。

岡部泉

梅の意匠

2017年8月2日 | izumi | イエローデータデザイン日記, 奥日田温泉 うめひびき

◼︎まずは梅、梅、梅の絵を描こう

いろんなことあるけど、今、目の前にあることをきちんとやろう。奥日田温泉の最終のオープンは今年の11月です。だから10月までには納めないといけないのです。そのためにはわたしの仕事は8月が決戦なのです。ということでこの日田のデザインは7合めまで見えてきました。もちろん現場はまだまだ先があります。今5合めくらいだと思います。一番苦しい時かと思います。暑い中本当に大変なことと思います。梅干し色の左官壁はどうなるのかな。。

わたしの仕事は最後の山、特殊意匠というアクセサリーをつけてあげることです。これがわたしの物件ではとても大事です。アクセサリーは派手すぎてもいけませんが、地味でも非日常空間では物足りないものになるのです。

旅館は住むわけではありませんので、ある意外性も必要です。しかしレストランよりも長い時間を過ごすのでその意外性も優しめがいいですね。
とりあえず、梅の絵をたくさん描かないといけません。梅、梅、梅。今週のわたしの課題です。

岡部泉